こんにちは。
いつも当ブログをお読みくださりありがとうございます!
今回は、かつて医療技術者として働いていた時のこと思い出して、食べ物を飲み込むときの「むせ」について書きます。
このご時世で各種医療・介護施設等に通いづらい中、ご家庭で食事介助をされている方に少しでも参考になれば幸いです。
目次
高野豆腐は意外にもむせやすい
介護食の情報を見ると、「むせやすい食べ物一覧」が載っていることがあります。
そこには、サラサラした水分(水やお茶)や、パサパサしたパンなどが、よく挙げられています。すっぱいもの(酢の物)などもむせやすいです。
突然ですが、下の写真は、昨年、実家の母がつくってくれたお料理です。
サーモンのマリネと高野豆腐。
私は特に高野豆腐が大好きなのですが、この「高野豆腐」は、よく「むせやすい食べ物リスト」に挙げられます。
高野豆腐の煮物って、柔らかくて出汁が効いていて、高齢者の食事にぴったりという気がしませんか?
ところが、先にも書いたように、高野豆腐は、意外にも飲み込みづらくむせやすいのです。私も学生の時に知り、その理由が印象的だったのでご紹介します。
飲み込みのプロセス
食べ物を口に入れて、飲み込むプロセスは、下の図の青い矢印のようになります。
例えば、ポテトサラダを飲み込むことを想像してください。
ポテサラは、ねっとりして、口の中でまとまりがよいですね。
たとえばポテサラのようなまとまった形の食べ物を口に入れて、噛んで、のどの奥に送り込まれると、咽頭という部位を境に「気管」と「食道」の分かれ目にきます(上の図参照)。
その瞬間に、
「気管」への通り道がふさがれて、ポテサラは「食道」の方に送り込まれることによって、無事に飲み込み完了となります。
(間違って気管に入ってしまうのがいわゆる「誤嚥(ごえん)」)
この「気管」への通り道がふさがれるタイミングが重要
です。
歳をとったり病気になったりすると、気管への通り道がふさがれるタイミングがずれやすくなり、ムセたり誤嚥しやすくなります。
まだ「気管」への道が、ふさがり切れていないのに、食べ物が通過してしまうと、食べ物がうっかり気管にはいって、むせたり、誤嚥したりします。
ではここで、「高野豆腐の煮物」を飲み込む状況を想像してください。
高野豆腐を口の中にいれて噛むと、じゅわっと出汁が出てきます。
この時口の中には、
高野豆腐の塊と出汁が混在
しているはずです。
出汁は、さらっとした液体。
高野豆腐は、固体。
喉を通過するスピードは、さらさらした液体=出汁の方が速いです。
ところが、
だし汁と高野豆腐。
水分と固体の混合です。
水分の方がさらっとしているので、
喉の奥に送り込まれていくスピードが速いです。
すると何かの拍子に
だし汁だけ先に喉の奥に
流れてしまうことがあります。
すると、(口の中には高野豆腐が残っていて)
気管への道がふさがれる準備ができていないのに、
だし汁だけ先に流れてくるものだから、
だし汁がうっかり気管の方に流れてしまい、むせたり誤嚥することになってしまいます。
ちょっと分かりづらいですが、
要するに、
「高野豆腐(固体)」と
「だし汁(液体)」では、
喉の奥からその先に送り込まれるスピードが違うので、先に流れた液体が気管に入ることがあり、むせやすくなるといういことです。
この
「食べ物が喉を通過する時のスピードの違い」というところに、学生の私はとても興味をひかれ、今でも印象に残っています。
少しマニアックな話になりました。
でももし、日ごろ高齢の方のお料理を作っている方や、最近むせるな、と思っている方がいらしたら、 「液体と固体」のように、形状の異なるものが混じっているお料理を作ったり食べたりするときに、「むせやすいかも?」と気にとめて頂ければとおもいます。
気にとめるだけでも、多少なりともムセを防ぐ助けになるかもしれません。